「当初はコミュニケーションがうまく取れない時がありましたが、どう接したら母が機嫌よくしてくれるのかが理解できてからは、介護がグッとラクになりました。」(岩佐さん)

行動異常は薬と接し方で減らせる

岩佐 MCIの段階で、家族や本人が気づくためのポイントはありますか?

長谷川 「ちょっと変」を見逃さないことです。女性の場合、料理によく表れます。料理を作らなくなった、同じ献立ばかりになった、味つけが変わった……。冷蔵庫に期限切れの食品や同じものがたくさん入っているのも特徴です。

ほかにも、財布が小銭でパンパン、おしゃれをしなくなった、車にこすり傷が増えた――などは、小さな変化なので見逃しやすい。男性の場合は何ごとも待てなくなり、怒りやすくなるのもサインです。

岩佐 父もそうでした。人工透析に通っているのですが、病院の方から、よく怒るのが気になるので専門の病院で検査してもらうように、と連絡があって。

長谷川 早い段階で気づくことができてよかったですね。そのまま進行すると「秋」が訪れ、暴言や徘徊、幻覚など、一人ひとり異なる行動異常が起こり始めます。高齢者の認知症患者の平均的な介護期間は6~7年。なかでも秋はご家族が特に苦労される時期ですが、実は1~2年しか続きません。