「そんな日が続くと、新聞くらい読もうと思ってもまったく文章が頭に入ってこないんですね。認知能力がひどく落ちているのを感じました。」

その3年後、今度は夫が自宅で倒れ、53歳で帰らぬ人になりました。その日は朝から調子が悪そうで、「仕事を休んで病院に行ったら?」と言ったところ、「いや大丈夫。ちょっとシャワーを浴びてくるね」と。まもなく「あーっ」という叫び声がして、慌てて浴室に行くとドアに内側からもたれかかるようにして夫が倒れていました。

救急車に同乗したものの、私はパニック状態。でも「心肺停止」という声はハッキリと聞こえました。死因は大動脈瘤破裂。それからしばらくは、大袈裟ではなく本当にまわりがモノクロにしか見えなくなってしまったのです。

夫とは再婚でした。とてもその死を受け入れられなかったし、誰にも会いたくなくて、葬儀は家族だけで済ませました。煩雑な手続きに追われ、食事もまともにとれず、足元はフラフラ。体重は1週間で4キロ落ちました。

当時小学5年生だった次女は、私以上に父親の死を受け止めきれなかっただろうと思います。私は娘たちの学校のことをこなしたり、母の施設に顔を出したりすることで毎日を乗り切っているような状態でした。

そんな日が続くと、新聞くらい読もうと思ってもまったく文章が頭に入ってこないんですね。認知能力がひどく落ちているのを感じました。車の運転もヒヤッとすることが何度かあり、さすがに怖くなってやめざるをえませんでした。