母や姉妹といった女たちは大切にかしずかれる存在だったとのことで――(提供:photoAC)
世界経済フォーラムが発表した、男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(2022年)において、日本の総合順位は146か国中116位と、先進国の中でも低かった。しかし、古典エッセイストの大塚ひかりさんは「古典作品をジェンダーの視点で読み解くと、日本という国が一変して見える」と言う。たとえば平安中期のころ、大貴族だったとしても、男性がお産の手伝いや子どもたちの料理を進んで作っていたとのことで――。

調理やお産の手伝いをする大貴族

平安文学に描かれる大貴族は、私の子ども時代なら「女々しい」と言われそうな仕事を、妻や娘のために進んでしていました。

『源氏物語』より少し前に成立した『うつほ物語』には、妻が妊娠すると、

「女の子が生まれるかも」("女御子(みこ)にてこそあれ)と期待して、

「"生まるる子、かたちよく、心よくなる"と言われる食べ物」を、包丁やまな板まで用意して、"手づから"と言わんばかりに、妻に付き添って調理してあげる大貴族が登場します(「蔵開 上」巻)。

女の子が生まれるかも……と期待しているのは、娘を天皇家に入内させ、生まれた皇子を即位させてその後見役として母方の一族が繁栄するという「外戚政治」が行われていたから。それでなくても、男が女の実家に通っていた当時、家土地が娘に伝領されることは多く、娘は大事にされていたのですが、大貴族の場合、政治の道具として欠かせないために余計に娘の誕生が望まれたのです。

『うつほ物語』には東宮の妻となった娘が第三皇子を出産するため里下がりした際、"御手づから"まかないをする大貴族も登場します。左大臣という政界の実力者である彼は、親しくお仕えする女房を御前に召して、産後に必要な食事を万事、調理して娘に差し上げます(娘は東宮妃なので父以上の地位です)。女房が思い通りにできないと、"御手づから"調理、正妻腹の息子たち、つまり娘の同母兄弟も出仕しないで姉妹のために控えており、

「何か私どもも致しましょうか」

と父大臣に尋ねると、父は、

「そなたたちはまだ未熟だろう。この爺はたくさんの子を生んだ、孫の母(つまり正頼の妻)もいたわり馴れている。こういう人(産婦)をこの折によくいたわって、気を配れば、容姿も特段損なわれぬものだ。東宮がよく思ってくださっているようだから、やつれさせずに参内させたい」

と言って、いろいろと素晴らしい食べ物を作って差し上げた(「国譲 中」巻)。