上流階級の男も妻や娘のサポートをする

いかがでしょう。

この大貴族は、産後の娘のために滋養のあるものを"手づから"用意するだけでなく、その母……つまりは自分の妻が子を生むたびに何度も同じようにしてきたと言うのです。その様子を息子たちにも見せ、教えている。

上流階級の奥方が料理などしないのは前近代のどの時代にも言えることですが、平安中期に限っては、上流階級の男が、産前・産後の妻や娘のために調理をしていたらしいのです。

注目すべきは、娘の食事の世話をするのが母親でも姉妹でもなく、父親で、それを教える相手も息子たち……と、すべて男で固められていること。母や姉妹といった女たちは大切にかしずかれる存在だったのです。

『ジェンダーレスの日本史――古典で知る驚きの性』(著:大塚 ひかり/中公新書ラクレ))