介護のさなかに子宮頸がんを発症
実は、介護しているさなか、私もがんを発症したのです。夫の付き添いで病院に行ったら、病院のトイレで大出血してしまって。検査の結果は子宮頸がん。幸いにも、2ヵ月ほど入院し、抗がん剤と放射線治療を受けたところ完治しました。今はすっかり元気です。
退院した翌日から夫の世話と家事が待っていたので、自分のことなど考えているヒマがなかったのがむしろよかったのかもしれません。
本来ならば、そのままずっと自宅で介護を続けるつもりだったのですが、昨年の夏、夫が誤嚥性肺炎を起こして入院。私には言わなかったけれど、食べ物を飲み込む力も衰えて、つらかったのでしょう。入院先の医師にすすめられ、やむなく胃ろうを作ることになりました。
本当は、家に戻ってきてもらい、最後まで自分で夫の世話をしたかった。それまで4年間、介護を続けてきたけれど、まだまだ尽くし足りないと思っていたから。
でも、医療知識のない私が、「自宅で胃ろうのケアや痰の吸引をするのは無理がある。共倒れになってしまうからやめなさい」と訪問介護の医師にも止められて、苦渋の選択でしたが、昨年の10月に、夫はパーキンソン病専門の介護施設に入所しました。
それ以来、私は人生初のひとり暮らしをしています。娘一家は、2年前に近所の高層マンションに引っ越したため、何かと不安がないわけではありませんが、このマンションはセキュリティがしっかりしているので防犯の面でも安心です。
「マンションに住むのは、あまり気がすすまない」と思っていたのに、いざ暮らしてみれば、一軒家よりも、シニアには住み心地がいい。掃除をするのも簡単だし、必要最低限のものだけを備えたシンプルなキッチンなので、料理をするのもラクですし。
年齢を重ねていけばいくほど、誰でも体が衰えたり、病気になったりするでしょう。でも、いざそうなってから引っ越そうと思っても遅すぎる。モノを減らすのも引っ越しをするのも、77歳という年齢が、体力、気力ともにギリギリだったと思います。
元気なうちに、コンパクトな家に住み替えておくことが大切なのだと、夫の介護を通して、つくづく実感させられました。