それでも、可能な限り自宅で介護をしようと決めたのは、これまでずっと、好きなように女優の仕事を続けさせてくれた夫に尽くしたいという思いがあったからです。
結婚して以来、一度もケンカしたことがない。もの静かで優しくて、本当にいい人なんですよ。24歳で結婚したときから、ずっと私を大切にしてきてくれた。そんな夫に、これからは恩返しをしようって。
もうひとつ、このマンションに住み替えていたことも大きかったかもしれません。夫は家の中でも車いすが必要な生活になってしまいました。もしあのまま2階建ての一軒家に住んでいたら、階段はあるわ、段差はあるわで、自宅で介護するのは到底無理でした。
その点、このマンションは全室がフラットな作りなので、車いすで室内を行き来するのもスムーズです。モノを減らして家の中がスッキリしたことも、コンパクトな住まいで夫の行動に目が行き届くことも、介護をするうえで幸いでした。
私たち夫婦の場合、このマンションに住むことになったのは、結果として最善の選択だったのでしょう。今思えば、何かに導かれて、ここに引っ越してきたような気がします。