上司もパワハラを告発されたことで警戒するように

それでも、Dさんに悪びれた様子はまったくなく、私との面談でもパワハラ被害を訴え続けた。そこで、あくまでも一般論として「被害者と加害者、両方の言い分を聞かなければ、パワハラとは認定できないんですよ」と説明した。

すると、Dさんは激高し、「あんたはうちの会社から金をもらっているくせに、客である社員に向かってなんてことを言うんだ!」と怒鳴り、目の前の机をバーンと叩いた。

『自己正当化という病』(著:片田珠美/祥伝社新書)

たしかに、私はその会社から報酬をいただいているが、面談の対象である社員が「客」という感覚には強い違和感を覚えた。しかし、Dさんのすさまじい剣幕に私は恐れをなし、黙り込んだ。

上司もパワハラを告発されたことで警戒するようになったのか、Dさんが作成した書類をいちいちチェックすることも、厳しく注意することもなくなった。

だからといって、Dさんのミスが減ったわけではなく、次の工程の担当者がミスを発見するたびに修正している。その分、確認のための時間がかかるし、修正のための作業も増えるので、一番の被害者はこの担当者かもしれない。