話し方のコツは、「情動」と「肯定」

ここからは、認知機能を上げるために効果的な話し方について解説していきましょう。キーワードは、「情動」と「肯定」です。

「情動」とは、一時的かつ急激な感情のこと。具体的には、怒り、喜び、悲しみ、恐怖、不安などの激しい感情の動きのことです。

認知症の方も、食事をうまくできなくて怒られれば「怖い!」と感じますし、自分がどこにいるかわからなくなった時に「一緒に帰りましょう」と声をかけられれば「うれしい」と思います。「怖い」「悲しい」といった負の感情よりも、「うれしい」「楽しい」といったよい情動を体験したほうがプラスになるのです。

もう1つの「肯定」は、良好なコミュニケーションに必須の要素。認知症の方が、朝食を食べたのに「食べていない!」と言ったとします。「30分前に食べたでしょう?」と否定したくなりますが、記憶が欠落している方にとっては、朝食を食べていないことこそ真実なのです。

それを頭ごなしに否定されると、「この人はわかってくれない」という悲しい気持ちや不信感が心に残ります。やがて、人との会話を避けるようになり、認知機能の衰えに拍車がかかるのです。逆に、周囲の人が認知症の方を肯定し続けていると、「この人なら話をしても大丈夫」という安心感が芽生え、コミュニケーションを取りやすくなります。

*****

《介護をラクにする言葉がけ例・2》
間違ったことを思い込み、譲らない時

<例>
・「すみません。ちょっとトイレに行ってきますね、すぐに戻ります」
 (と、部屋を出る)
・「はい、わかりました。ところでのど渇きませんか?お茶を淹れてきましょうか」

相手を否定せず、上手に受け流しましょう。もし腹に据えかねる展開になったら、その場からいったん離れてください。無言で離席すると悪印象になるため、きちんと伝えてから離れましょう。