夫が失業していても構わないかな

相手が優しければ、その分自分も優しくなれるというのが人間の性。パートに出てからの夫の温かさは、「さっさと仕事を見つけろ!」と内心舌打ちしていた優子さんに、本心から「次の仕事、ゆっくり探せばいいからね」と言わしめるまでの癒やしとなったらしい。

「息子たちと同年代の子とも触れ合えるパートは、大なり小なり芽生えた『息子ロス』を忘れさせてくれたし、給与明細を目にするたび充足感が漲る。このまま夫が失業していても構わないかな、なんてね。

いい年をして恥ずかしげもなく言わせてもらうと、稼ぎがなければ、夫は女もつくれず、『私だけの男』であり続ける。正直、長年ご無沙汰だった夫婦関係も復活したんです。そうした現実が、もっとも私を潤してくれたのかもしれません」

とはいえ、夫は約半年の休業を経て、雇われ建設職人となった。給料は安いが、毎日寄り道せずに帰宅する。夫婦円満は、息子たちが帰省する日数も増やした。「オヤジ、ずいぶんと『家庭人』になったな」と微笑む息子たちのグラスに、照れながらお酒を注ぐ夫。家族全員で晩酌するのが至福の時だ。

「そう、長男は一昨年、地元の建設会社に就職。いずれ会社を再建して、父親と働くのが夢なんですって。大学3年生の次男も、工事現場でアルバイトをしている。もしかして兄の背中を追うつもりかな? 会社の倒産は『大事故』でしたが、家族をひとつにまとめてくれた気がします」

 


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