一番苦労したのはバット

兄の時と違って、今は父が読売ジャイアンツのユニフォームを着ており、いわば「同じチームの一員」である。

瑛介が一途に野球に専念してジュニアを目指している傍ら、どう転んでもいろんな周りの声が聞こえてきそうなことだけが、母親である私には気がかりだった。心配を言葉に出しても仕方のないことなのだが、瑛介の耳にだけ届かないことを願った。実際はこのことがあとで次男を一番追い詰めてしまうことになるのだけど…。

ただただ、息子の努力はどこかで報われますように。
祈るように息子のドロドロユニフォームを洗濯板で擦り洗う毎日だった。
いつも私の祈りは、洗濯板ゴシゴシの中にひたすら込められているのかもしれない。

「父の苗字」をユニフォームに背負って

ところで、わたしは野球に関してはあまり詳しいことは言えないのだけれど、今年瑛介が一番苦労したのは、バットだったように思う。

今、軟式野球で学童チームにもかなり普及している、いわゆる高反発素材の「飛ぶバット」。数年前からジワジワと普及し始めたのだが、その威力は壮絶なもので…
とにかく、小学生でもとんでもなく飛距離が出るのである。

しかも体格の大きさに関係なく、たとえ小さな体でも、一振りで場外弾。バットに当てる技術と少々のパワーを身につけさえすれば意外なほど飛ばせるバットなので、ちょっと体格の大きな小学生が振ろうものなら…とにかく恐ろしく飛ばせるバットなのだ。お値段一本4万円超。そうそう手の出る価格ではないと思うのだが、あっという間に学童野球チームに浸透して、今やスタメンがズラッと全員このバット、というチームも多い。