私は、商売を営む環境で育った友人のお母さんのこんな言葉を思い出します。

そのお母さんは友人に「少し安いからといって、大きなスーパーで買い物をしてはいけないよ」と常々言っていたそうです。友人のお母さんも、商店を経営していました。そのため、近所の商店で物を買わないと、自分たちのお店で買い物をしてもらえないよ、商売は持ちつ持たれつなんだよ、ということを行動を通して友人に教えていたのです。

また、経営者は働いていない時間の行動もビジネスに影響します。近所を散歩する時でも、お客さんに会えば、愛想よく挨拶をしますし、地域と共存していくために、子どものPTA活動や、地元のお祭りなどの行事にも積極的に参加していかねばなりません。

「私が記憶しているお母さんは、いつも笑顔で愛想よくしていたわ」とその友人は話していました。そうした親の姿は子どももちゃんと見ているのです。

商売を営んでいる家庭と、会社員家庭では、生活態度が違います。会社員の家庭では、より意識して子どもの時からさまざまな経験をさせ、話してきかせることが必要です。

たとえ会社員であっても、親自身も自分の責任でリスクにもポジティブに立ち向かっていく精神や、新しい事業を創造するといった「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」という考え方、自分が自分の仕事と人生の「主人」(オーナーシップ)だという考え方を持つことが必要です。

会社員家庭と、商売を営む家庭の大きな違いは、このアントレプレナーシップやオーナーシップが備わっているか否かでしょう。どんなに小さくても自身でビジネスをしている人は、自分の判断と責任で仕入れやサービスを行い、それがビジネスに跳ね返ってくるため、オーナーシップの精神が養われます。