会社員家庭だと、自分がズレていても気づかない

親がビジネスやリスクに果敢に挑む姿、お客様とやり取りする姿、仕事仲間と協力している姿、さらには近所や地域とのつながりを維持している姿を通して、子どもたちは親の全体像をみるようになるでしょう。

『思い込みにとらわれない生き方』(著:坂東 眞理子/ポプラ社)

幼い時から、親も含めて社会のさまざまな人や出来事と触れ合うことは、多様な価値観に触れることでもあります。他者と自分とを比較して自分の思い込みに気付いたり、世の中には自分とは異なる考えの人がいることを知ったりすることで、結果的に、アンコンシャス・バイアスが起こりにくくなるのです。

また、会社員家庭ではお金の使い方についても、「節約と貯蓄が美徳」になりがちです。会社員は、毎月収入が一定なので、日常生活では無駄使いしないことで少しでも支出を削り、家計を黒字にして余った分を貯蓄するという考え方になりがちです。

しかし、経営者家庭はそうは考えません。将来のための投資として高価な設備を整えるとか、地域のイベントに協力する、よいつきあいのためにはお金をかける、そしてそれが必要経費だという考え方が身についています。

会社員家庭の場合、「お金を稼ぐにはどうしたらよいのか」「自分の仕事は社会からの影響を受けて成長したり、衰退したりする」「人脈の重要性」などをリアルに学びとる機会がなかなかありません。

こういった会社員家庭で起こる「経験の乏しさ」は、もともと誰もが持ち合わせているアンコンシャス・バイアスをさらに助長してしまいます。現代の日本では勤労世帯のおよそ8割は会社員です。

すなわちこれは、別の価値観に出会う機会が少なく、「自分とは違う考え方があるのだ」「ずっと当たり前だと思っていたことだけれど、社会的な流れとは、ずれているかもしれない」と自分の常識を疑う機会がない、ということになります。核家族であればなおさらそうでしょう。