「子どもは親の姿を見て育つ」と言いますが――(提供:photoAC)
無意識の思いこみや偏見を意味する“アンコンシャス・バイアス”。「それぞれが持つアンコンシャス・バイアスが直接的に作用しなくとも、社会や周囲のそれが影響し、知らないうちに誰かのやる気や可能性を抑えかねない」と、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さんは指摘します。特に育ってきた環境によって生まれる”アンコンシャス・バイアス”には注意すべきだそうで――。

アンコンシャス・バイアスはその人自身の経験値や環境の影響をうけて形づくられます。それでは具体的にどういった場合に、どんな思い込みに陥りやすいのか、それぞれの場合で考えてみたいと思います。

育った環境 〈〜会社員家庭と自営業の家庭〜〉

私は、会社員家庭、かつ核家族の中で育った子どもは、人間関係が狭くなる傾向にあると考えています。

会社員は、勤務時間という与えられた時間に働き、お給料をいただくという働き方です。勤務を通じて社会とつながるため、帰宅すれば仕事や社会とは切り離されます。

「子どもは親の姿を見て育つ」と言いますが、親が会社員でオフィス勤務だったりすると、両親が働いている現場や、また本当に苦労している姿を見る機会がほとんどありません。見かけるのは、家に帰ってきて疲れているところや、休日のくつろいでいる姿です。

これでは両親がどんな仕事をしているか、どんな気持ちでその仕事に取り組んでいるか、どれだけ努力しているか、どんな人間関係の中で働いているのか、推し量るのはそもそも難しくなってしまいます。

それに対し、なにかお店を経営していたり、家族で町工場を営んでいたりする場合は違います。自営や経営者の家庭で育つ子どもは、いやでも親の働いている姿、商売を切り盛りする大変さを目の当たりにします。

さらにそれだけではありません。商売を続けていくにはお客に来てもらわねばならない、お客にきてもらうには日ごろのつきあいが大事とわかります。自分の家の商売が、どれだけ地域に密着しているか、などを肌身を通して否が応でも知ることになります。