「不安」を感じる新入社員

では単に、「社会的経験が多い新入社員は楽しく働けて、会社のことも好きでハッピー」という話なのかというと、そうではない。

『ゆるい職場――若者の不安の知られざる理由』(著:古屋 星斗/中公新書ラクレ)

現在の新入社員の「不安」感は決して低くないということをすでに示したが、この不安感についても入社前の社会的経験の量と一定の関係が見られている。

具体的に「不安だ」という項目に「あてはまる」と回答した割合は経験「多数」で41.9%と、「全くない」グループの26.2%と比較して高い傾向が見られる。なお、「複数(2-3回)」で34.5%、「単発(1回)」では32.4%と、経験が多くなるにつれて不安を持つ若手も"多くなって"いるのだ。

さらに掘り下げて、現代の新入社員のほぼ半分(48.9%)が「強くそう思う」または「そう思う」と回答していた、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」か、という質問を例に挙げて検討する。この結果を見たうえで、3つのポイントがあると考えている。

「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」の回答割合(2019─2021年卒、入社前の社会的経験別)

1つ目は「強くそう思う」「そう思う」と答えている人の割合が、経験が多くなると増えていることである。経験4回以上では合わせて58.0%となっており、これは全くないグループの合計40.4%と比較して高い。

2つ目は「全くそう思わない」「そう思わない」も、経験が多いグループほど多いということである。1点目と矛盾するようだが、実際に減少はしていない。

3つ目のポイントは、1点目・2点目の帰結として、「どちらでもない」割合が、経験増とともに急速に減少する傾向が見られることがわかる。経験4回以上では14.7%と全くないグループ(40.7%)の半分以下である。