トランプに囲まれた花。花も幻視によく現れるモチーフだ (2020年12月)

私は会社員や自営業を経て、07年からは指定管理者制度(民間事業者が公共施設の管理・運営を代行する制度)で区立図書館の館長を務めていました。

図書館では、利用者の高齢化に合わせて闘病記や介護関連の本を集めた特設コーナーを作って好評だったのです。そうしたなかで私は今後の勉強のためにと、都内で開かれた「超高齢社会と図書館研究会」という催しに参加してみました。

研究会でもっとも印象に残ったのが、VR体験でした。大きめのゴーグルを掛けて身体を動かすと、認知症の人が見ている世界を体験できるというものです。そのなかに、レビー小体型認知症の大きな特徴である幻視体験も入っていました。

部屋に見知らぬ男が座っている、テーブルの上をヘビがうごめいている、といった怖い映像が多かったのを覚えています。

研究会の資料を読み返してみると、ここ最近の体調の変化で当てはまることも多かった。でもそれだけでは判断がつかなくて、「年のせいかな」と放っておいてしまったんです。

妻は相当心配していたみたいで、最初は一人で行くつもりだった病院にも「一緒に行く」と付いてきてくれました。簡単な検査の後、「気になるようなら大きな病院で検査を」と言われ、自宅からも通いやすい昭和大学病院に紹介状を書いてもらいました。