不甲斐ない試合の後、瑛介が泣いていた
子どもなのだから、単純に、「ジャイアンツの岡本選手と同じユニフォームを着て野球をやりたい!」などと憧れて、ここを目指して頑張ってきたのだと思う。
ところが、袖を通してみて徐々に徐々に感じてくる、ユニフォームの「重み」。
これはもう、着たものしかにしかわからない感覚なのだと思う。
ましてや本当に、「読売巨人軍」という球団から支給されるもの。
袖を通す彼らにしか絶対わからない、「重み」。
いろいろなチームと試合をすればするほど、嬉々として技術を上げ活躍する子もいれば、
ユニフォームの重みでどんどん体が動かなくなっていく子もいる。
いろんな子がいて、何が起こるかわからない。
学童野球とはそういうものなのだと思う。
そこがたまらなく面白くて、楽しいところなのだが…。
どうやらここの子達は「うまい」「大人顔負け」と言われる野球をやらなければいけない
重責を少なからず感じているように思った。
瑛介は前回の連載にも書いた通り、思い切り振り回し、暴れてほしかったバットに、逆にブンブン振り回されてしまった数ヵ月だった。
最初の絶好調からバットが変わるごとにどんどん調子を落とし、悩み、もがき、新しいことを試しては転げ回り…少し調子が上向いてトンネルを抜けたかと思うと、また転ぶ毎日。
ある日、地元の選抜チームのキャプテンとして出場した大会で、ノーヒットで終わった試合後。
次のジャイアンツジュニアの試合のために、瑛介は飛び出しで私の車に乗りこんだ。
きっとそれまでの疲れも溜まっていたのだろう。
不甲斐ない試合を終えて飛び出しで乗った車内で、アイブラック(眩しさを軽減するために目の下につける遮光の黒いグリース)がドロドロになって落ちるほど、おーーん、と上を向きながら、瑛介が泣いていた。