仕事も恋愛もと望むのは欲張りだと思っていた

自他ともに認める仕事人間として生きてきました。大学卒業後すぐに結婚し、家計を助けるためにフリーランスのライターとして働き始めます。結婚3年目には息子を出産。ですが、私の収入が増えるのと比例して夫婦関係が悪化してしまい……。夫のDVに耐えきれず、離婚したのは33歳の時でした。

やがて俳優のマネジメント・プロダクションを立ち上げ、39歳の時にテレビドラマの制作会社を起業。50歳を目前に、映画を製作したいという長年の夢に着手し、監督として5本の映画作品を世に送り出すことができました。

息子を抱え馬車馬のように働いて、再婚を考える余裕など、精神的にも時間的にもなかった。仕事も恋愛もと望むのは欲張りだと思っていました。

そんな私にも、老いは刻々と迫ってきます。まだまだと思っていても、仕事の依頼は激減し、女として見られることもなくなった。社会からの「外され感」に苛まれるようになっていきました。

そんな最中、74歳で初めて挑んだ小説『疼くひと』は、70代の女性が期せずして50代の男性と出会い、性愛の喜びを取り戻していく物語。

セクシュアリティが封印されている世代だからこそ、「生」の根源にある「性」というテーマに向き合い、世間体や社会通念から解放されて自分を開く女性の姿を描きたかったのです。

でも、私自身は小説を発表した後も、孤独でした。コロナ下の自粛生活も重なり、自分は人恋しさを抱えたまま暮らして、後は死ぬだけなのかと考えると虚しさを覚えたことも。