その日も、ワイングラス片手に語り合って楽しかった。しかも私は駅の改札口で先生の背中を見送りながら、「彼に触れたい」と思っていました。女性ホルモンが活性化したからなのか、彼だからなのか。

それまでは年齢コンプレックスから「もっと早くに出会えていたら」などと思っていたのだけれど、自分は世間体を気にしていたのかもしれない。そう気づいて、自分でも驚くほど開き直っていました。

70代半ばの女が恋をしたからといって、何がいけないの? と。

 

彼の娘に結婚を勧められて

2022年の元旦は、私の家で一緒に過ごしました。先生は娘一家と同居しているとはいえ、互いに干渉しないという暗黙のルールのもと、食事も自分で作り、一人で食べると聞いていたので、私からおせち料理をご一緒しましょうと誘ったのです。

その日も話が弾み、松が明けて再びわが家で過ごした日、初めてキスをしました。どちらかが求めたというのではなく、磁石みたいに引き合って唇を重ねた、対等なキス。私は、「わきまえた女」でいなければ男性に引かれてしまうという呪縛から解き放たれたのを感じました。

残りの人生を共に生きていこうと決意したのは、肉体的な触れ合いを通して肌合いのよさを確信したからです。この人の介護だったらできる、と。一緒に暮らし始めてみて、介護する日は思いのほか先だと安堵しているのですけれど。

先生は今も週3回のペースでジムに通う元気ぶり。もしかしたら将来、介護されるのは私のほうかも。(笑)