壁から取り外されたドアモニターは、夫の実家にプレゼントすることになった。
「いいの? こんなのもらって」「は、はい。いつもお世話になっているので……」
魂の抜け殻が返事をする。数日後、大人しか住んでいない夫の実家に立派なドアモニターが付けられた。息子に外からチャイムを押してもらう。モニターに映し出された鮮明な画像は、「ヤッホー」と笑顔の息子。これを自分の家で見るはずだったのに……。
冬休みが始まってしまうので、心の傷が癒えないうちに2台目のモニターを買いに行かねばならない。今度は3万円のもの。スマホと連動なんてしない、ごく普通のものだ。もちろん、あの店員がいる家電量販店では買わなかった。
「3000円プラスすると、保証期間が延びますが、いかがなさいますか?」
いつもなら「結構です」と即答する私だが、もう自分を信じられない。3000円をケチって、保証期間のあとに故障したらどうする? と悪魔のささやきが聞こえる。
「お願いします……」
2台目は無事に取り付けられた。画像があまり鮮明でないため、知らないおじさんが映っていると思ったら夫だった……なんてこともあるが、一応ちゃんと使えている。
「ピンポーン」。クイズ番組の正解のような電子音が鳴っている。しかし、私の買い物の仕方は完全に「ブッブー」だった。節約主婦への道はまだまだ遠い。