「手紙」がモチーフの対画

17世紀のオランダ絵画の例もあげておこう。メツーによる『手紙を読む女』。

ハブリエル・メツー『手紙を読む女』1664年-66年 アイルランド国立美術館蔵

エリザベス作品の場合は画中画が対画だったが、本作はこれ自体が対画で、もう一点は若い男性が自宅で手紙を書いており、こちらはその手紙を読んでいる。

ハブリエル・メツー『手紙を書く男』1664年-66年 アイルランド国立美術館蔵

――恋人からの便りを窓辺で一心に読む彼女のそばで、バケツを抱えたメイドが、壁に掛かった絵を見るため、無遠慮にカーテンを開けている(当時もエリザベス一世時代と同じく、大切な絵はカーテンで保護していたことがわかる)。メイドが見ているその絵は、嵐に翻弄される帆船だ。つまり女主人の恋は順風満帆とはゆきそうにない、という次第。