自分の居場所の見つけ方
サコ おっしゃること、すごくよくわかります。私も、建築という専門分野はもちろんありますが、そのベースに固執せず、むしろ別の分野から建築がどう見えるかを常に考えています。
今度、近畿建築士会協議会70周年記念の会で基調講演をするのですが、私は通常ならまだそうした場に呼ばれる年齢ではありません。でも、建築に軸足を置きながら外の視点も持っている稀有な人材ということで、会長が「その視点が絶対に必要だから」と、直々に依頼してくれた。建築だけをずっとやっていたのでは、決して評価されていなかったでしょう。
「君のレベルはまだ足りない」「君にはまだ早い」と言われ続けていたはずです。多くの研究者が苦しんでいるのが、そこなんです。あの先生がいる限り、前に進めない、と。専門分野と並行して別のこともやっていれば、もっと視界が開けるのですが、王道から外れるのが怖くてほとんどの人は踏み出せない。
内田 これは数学者のポアンカレが言っていることなんですけれど、「知性の働きは違うところにあるものが実は同じものだと気づくことにある」そうです。そして、両者の距離が離れているほどその発見は生産的なものになる。「あれって、これじゃん」という気づきのことですね。
僕は極端な言い方をすると、この「あれって、これじゃん」という発見にしか興味がないんです。まったく別の領域で、別の文脈にあるものが、実は「同じ」だと直感した時の喜びって、他の経験では代え難いから。