2020年4月10日、ネット上で生配信ライブを行い、「緊急事態宣言の夜に」を披露したさださん。歌詞には、「お前のおふくろ 死なせたくないんだ」「今 ひとつになろう」など、強く訴えかけるメッセージが込められていた

「緊急事態宣言の夜に」に込めたメッセージ

新型コロナウイルスは、人類にとっての「災害」といってもいいと思います。これまで、災害が起こると、人は互いに助け合おうと行動してきました。でも、人と人を遠ざけ、お互いを拒絶させるような災害は初めて。ドイツでは9月からイベントや演奏会などを本格的に再開させると言っているらしいけど、日本はなかなか出口が見えないよね。当分の間ライブはできないのかなと思ったりもするし、関係するスタッフたちのこれからの生活が心配です。

4月10日には、僕のやっているYouTubeチャンネルで「緊急事態宣言の夜に」という歌を披露しました。今後CDには入れないし、この先ライブでも取り上げない。「その場限り」のつもりで作りました。歌詞の内容は、医療や輸送、警察など外に出なくてはいけない人のために、僕たちは家にいよう、と呼びかけるものです。

日本における「緊急事態宣言」は、法的な強制力がないために「発令」ではなく「発出」と言うそうです。海外のように、軍や警察が道路を封鎖して出入りを止めたり、パトロールして外出した人を捕まえたりすることはできない。だからこそ自分たちなりの秩序と理性でこの状況を切り抜けられたらカッコいいな、と。情勢が緊迫していくなかで、そういう前向きなメッセージを出そうと思ったんです。

同時に、「自由を守っていく」ことも、今の僕らの大事な闘いです。僕らはときに、「自由」というものを履き違えてしまう。本来は「人からされてイヤなことは、人に対してしない」とか、「耳に痛い発言を許す」とか、自明のお約束があるでしょう。約束ごとの上に自由が成り立っているわけです。

でも、自発的なお約束が「〇〇をするな」「○○を言うな」などと、“禁止事項”として明文化されると、自由はなくなってしまうんです。やりたいことをできる、言いたいことが言える自由とは、かけがえのないものなんだと改めて感じています。

僕はコンサートのとき、常に「世の中が不幸になったら、音楽の自由が奪われていくんだから。音楽が自由に表現でき、自由にみんなが聴くことができるというのは、実は平和のひとつの象徴なんだよ」と主張してきました。案の定、こうした「有事」になると、音楽の表現は止められてしまった。自由に歌えない、生で聴くこともできない。

いくらネット上でライブを開催しても、ライブ会場のあの空気感や音圧までは伝えられません。だからこそ、この自由を守るために、「みんなでがんばってこの災害を乗り越えようよ」と伝えたかったのです。誰に強制されたわけでもなく、何かを批判したいわけでもなかった。

ライブ配信後に「国の手先か」という意見があったらしい、と聞いたときは驚きました。僕はどこの党にも与していないし、みんながみんな、国のいいなりになって生きているわけじゃないですよね。

面倒なことに怒りを感じることが多い世の中だからこそ、僕はあえて、小さな「ありがとう」を探していきたい。厳しい状況で働いていらっしゃる方たちへの感謝はもちろん、家族や友人たちへ。そうすることでこの危機を乗り越える力が生まれてくるはずだと思うからです。