福祉や介護の現場への支援にたずさわって

新型コロナウイルスが収束した後、世界は大きく変わると思うんですよ。欧米ではそれまでマスクをする人が少なかったようですが、日本人にとっては、マスクをするのはわりと普通のことですよね。今、この習慣が世界中に広がっています。挨拶も欧米人はハグをしますが、僕らはお辞儀の文化なので、もともとソーシャルディスタンスを守ってきたんですね。

これを機会に、日本という国の見直しが始まるのではないでしょうか。日本の文化ってなんだろう。私たちが守るべきもの、本当に大事にしていかなくてはいけないもの、そして捨ててもいいものはなんだろう。今、みんなそういうことを考えていると思います。それがひとつのムーブメントになってくると、この国をもっと大事にしようという思いも育ってくるのではないでしょうか。

本日発売の『さだまさしコンサートツアー2019 ~新自分風土記~』

僕は2015年に、「風に立つライオン基金」を設立して、災害復興支援などのお手伝いをしてきました。僕の「風に立つライオン」という歌は、アフリカで活動された医師の柴田紘一郎さんへ捧げたものですから、基金では海外や国内の僻地医療にかかわる人たちへの支援もしています。

新型コロナウイルスの蔓延を受けて、ささやかですが、医療用品を買って困っている病院にお送りすることも始めました。ただ、小さな団体ですし、物資の面で貢献し続けるには限りがある。ほかの方法で何かできないか、と考えました。

そこで今後懸念される福祉崩壊を防ぐために少しでも役に立てればと、お医者さんにお願いして、福祉施設や介護施設の介護士の方々にコロナ対策の出張指導をしていただいています。今はネット上の情報が多すぎて、どれが正しくてどれが間違っているのか、現場の介護士の方々もジャッジできなくて困っていますから。

たとえば、感染を防止したいけれど物資が足りない場合、防護服の代わりにゴミ袋を使ってもいいのか、フェイスシールドのかわりに、つばのある帽子にビニールを垂らしたものでも事足りるのか……。毎日不安を抱えながら現場で踏ん張っている。そんなとき、お医者さんから「こうすれば大丈夫だよ」と言ってもらうことが、どれだけ心の励みになるか。各施設から大変な感謝の言葉をいただいて、この活動は続けるべきだなと思いました。

再びコンサートのステージに立てるようになったら、皆さんに「お帰り」と言ってあげたい。そしていつも通りのさだまさしを聴いていただくのが、僕の一番の仕事かなと思います。ライブやコンサートの空間は、なんでもなさそうだけど、平和で幸せな空間だということをかみしめて、その瞬間を味わいたいですね。そのために、今はみんなと一緒に秩序と抑制を大切にして努力する。僕なりの闘い方を続けていきたいと思っています。