歌えばお金になる、ただそれだけで

昔の私は、コンプレックスの塊でした。幼いころ、父が大きな借金をし、取り立ての人が家に来て、母はいつも泣いていた。私は10歳でスカウトされたのですが、当時は歌手なんてまったく興味なかった。歌えばお金になる、ただそれだけでした。

高校卒業と同時に私がデビューするのを待っていたかのように、父と母は離婚。母と2人の妹の生活が私の肩にのしかかりました。初のお給料7万円を手にしたときの喜びは、忘れられません。でも、決して自分では使わなかった。

妹たちの名前で預金通帳を作り、そこに毎月入れていきました。妹たちを学校に行かせて、お嫁にやるのが私の役割。妹たちが結婚するときに恥ずかしくない家を建てると決意し、ひたすらお金を貯めたのです。

父と母を見ていると、とてつもなく切なかった。教養がないというのは、どれほどみじめなことか。父も母も、まともな字は書けず、満足に挨拶ができない。若いころは両親を恥ずかしく感じ、私はそうでない生き方をしたい、這い上がりたい、と思って生きてきました。

結婚が決まったとき、私はいったん歌手をやめようと決意しました。それまで負けん気だけでやってきた私は、とにかく結婚したら芸能界をやめたかった。子どもを産んでお母さんというもう一つの人生を生きたい。そう願い、事務所の了解を得て、新規の仕事は入れないようにしてもらいました。

でも、10ヵ月もしないうちに私自身が寂しくてたまらなくなって……。ああ、私はこんなに歌うことが好きなんだ、と思い知ったのです。