「とにかくいろんな国の人に演歌を問うてみたくて、14年2月、路上で歌う覚悟で、人種のるつぼ・ニューヨークへ向かったのです。」(撮影:本社写真部)
2023年2月20日の『徹子の部屋』に神野美伽さんが登場。歌手生活40周年、自身の体調の変化などにについて語ります。
神野さんが歌手生活​35年周年を迎え、自身の新たな活動について語ってくれた『婦人公論』2018年7月10日号の記事を配信いたします。

ニューヨークのライブハウスに演歌を引っさげて登場、以来観客を魅了し続けている神野美伽さん。歌手生活35周年、激動の日々を振り返り、今思うこととは──。
(構成=菊池亜希子 撮影=本社写真部)

演歌は海を越える!?

2018年3月、アメリカ・テキサス州のオースティンで開催された音楽フェス「サウス・バイ・サウスウェスト」で演歌を歌ってきました。私がニューヨークのライブハウスで歌い始めたのは4年半前。演歌というジャンルが、日本の中だけ、しかも狭い年齢層にしか向けられていないことに、ずっと歯がゆさを感じていたのです。

演歌独特のリズムと謡い回しは、世界中で日本にしかない。必ずどこかで求められるはず。とにかくいろんな国の人に演歌を問うてみたくて、14年2月、路上で歌う覚悟で、人種のるつぼ・ニューヨークへ向かったのです。

いくつもの店でオーディションを受け、あるライブハウスでようやく15分だけステージに立つ時間をいただくことができました。アカペラで歌い出すと、一瞬で会場がシーンと静まり返る。静かな曲では、涙を流してくれる人も。激しく歌えば、声を出して応えてくれる。ああ、この一体感がほしくて私は歌っているんだ、と思ったのです。

ジャズピアニストとして活躍する大江千里さんと会えたのも、ニューヨーク。4年前のことです。千里さんは日本での名声を捨ててジャズを究めようとニューヨークへ移り住み、日本の音楽を違う形で見つめ直していました。その千里さんと、演歌は世界で通用すると信じる私が、あのタイミングで会ったのは偶然ではないと思います。

ジャズ界の巨匠、マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルさんとは、千里さんを通じて知り合いました。自宅に招かれ、自らお茶を淹れてくださって。千里さんの伴奏で一緒に歌いながら、「近い将来、必ずジャニスとステージに立つ」と確信しました。

 

世界63ヵ国のアーティストが参加するミュージックフェスティバル「サウス・バイ・サウスウェスト」。三味線を弾きながら熱唱する神野さんに、客席から「クール!」「アメイジング!」の声が(写真提供◎キングレコード)