養老先生いわく、誤解の多くは放っておくと自然に解けて消えていくそうで――(撮影日:2015年10月28日 撮影:本社写真部)
「考えても答えは出ません。それでも考え続けます」と話すのは、東京大学の名誉教授で解剖学者、『バカの壁』などのベストセラーを持つ85歳の養老孟司さんだ。養老先生は子供の頃から「考えること」について意識的で、一つのことについてずっと考える癖があったことで、次第に物事を考え理解する力を身につけてきたそうです。著書では脳と心の関係から、自分を自由にしてくれる養老流ものの見方、考え方を解説しています。その先生いわく、「あの人は私をわかっていない」「私を誤解している」などと思うのは、誤解ではない「正解」があるという前提に立っているからだそうで――。

自分も他人もわからなくて当たり前

いまでも虫を相手にしているときが、一番落ち着くのですから、世間からズレていることは間違いありません。

でも、年を取って世間や他人との折り合いのつけ方がようやくわかってきました。

人のことをわかりたいというのは、裏を返せば自分のことがわからないということです。わかるわけがありません。自分は変わるからです。

いや、自分だけじゃなく相手も変わる。自分のことさえわからないのだから、他人のことがわからないのは当たり前です。

だったら他人だって、あなたのことがわかるはずがありません。

それなのに、「あの人は私をわかっていない」「私を誤解している」などと人は言います。