兄のさっぱりした性格と病状から、まわりくどい言い方は良くないことを知っていた。

「お兄ちゃん、S病院の先生から電話があった。私も一緒に病院に来てくれと言われた。一緒に行こう」とだけ言った。

兄はすんなり「そうか」と言い、私は兄とS病院に行くことになった。

担当の医師の説明は、「腹部大動脈瘤は1年に約0.5cm大きくなったりする。瘤の大きさが5cm以上になると破裂する危険が増す。破裂すると大出血して命にかかわる。

大動脈を人工血管に置き換える『人工血管置換術』か『ステントグラフト内挿術』をする必要がある。どちらもうちの病院ではできないので、K精神科病院の先生と相談して手術ができる病院を探してほしい」というものだった。

すぐにK精神科病院に兄と共に行った。担当医師は、「うちの病院は精神科以外は内科と歯科しかないから、手術はできない。妹さん、手術をしてくれる病院を探しなさい。見つけたら私が紹介状を書くから」と言う。

兄は「手術をしたい」と担当医師にはっきりと言った。

私のように手術をするかしないかで迷わず、兄は勇気があって偉いと思った。生きたい気持ちのある兄を優先させよう。私は胆嚢を取る手術をやめようとその場で決意。そのとたんにファイトが湧いてきた。