結果は、電話をかけた病院に全て断られた。
理由は、精神科病院だと大きな手術ができる外科がなく集中治療室もない。一般病院は入院できるような精神科病棟が併設されていない。さらに、兄が何種類もの薬を飲み、手術の麻酔や予後の保証ができないということだった。
私はK精神科病院の兄の担当医師に電話した。
「先生、疲れました。何処も手術してくれません」
「だめだよ。病院を探さなくては、お兄さんは死んじゃうよ」
私が兄を殺してしまうのだ…。そう思ったとたんに、閃いた。まだ電話していない病院があった。膵胆管合流異常の経過観察をすることに決めたM病院だった。
M病院に電話すると、心臓血管外科の医師が診察するので兄を連れてきてくれと言われた。すぐに予約を取り、兄とM病院に行った。
心臓血管外科の医師からは、「うちの病院で手術はできるが、手術の前や後に精神が不安定になったら精神科は外来しかない。術後すぐにK精神科病院に戻すのは過酷すぎる。私の大学の後輩がT大学病院の血管外科にいるから、その医師を紹介しよう。あの病院なら入院できる精神科がある」と言われた。
私は未来が開けたような気になり、すぐにそのT大学病院の予約を取り、兄と紹介された医師に会った。医師は入院日を決めてくれ、精神科の医師にも電話してくれた。
しかし、その時の精神科の医師の返事が気になっていた。「入院したら対応を考える」とのことだった。