2023年1月8日、東京・両国国技館で始まった大相撲初場所は、1月22日、大関・貴景勝の優勝で千秋楽を終えた。今場所はまたも横綱不在。見どころ満載、どんな優勝争いが繰り広げられたのか?『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。

前回「初場所優勝の行方は千秋楽結びの一番、大関・貴景勝と前頭13枚目・琴勝峰の対決に。十両では元大関の朝乃山が14日目に優勝」はこちら

大関・貴景勝が2年2ヵ月ぶりの優勝

大相撲初場所は、千秋楽の結びの一番で大関・貴景勝が、母校の埼玉栄高校の3学年後輩である前頭13枚目・琴勝峰を降して、3回目の優勝を果たした。

貴景勝の優勝は令和2年11月場所以来2年2ヵ月ぶり。貴景勝も琴勝峰も3敗で対戦し、琴勝峰は初優勝を逃し、勝てば殊勲賞受賞だったが、敢闘賞だけを獲得した。技能賞は小結・霧馬山が受賞した。

1横綱、1大関の場所は、明治31年1月場所以来125年ぶり。しかし、横綱・照ノ富士は初日から休場。貴景勝は先場所、優勝を決定する巴戦で敗れて優勝を逃し、今場所はハイレベルな成績なら横綱への望みがあったが、3敗した。それでも連日、突き押し、張り手合戦を対戦相手として、口の中や鼻から出血をしながら頑張ってきた。

貴景勝は以前は怒ったような子供顔になると勝っていたが、今場所は「あなたのことは分かっていますよ」というような賢い上司の顔になると勝っていた。この顔は、対戦相手の相撲が分かっている自信の表れかもしれない。

NHKテレビの正面解説の北の富士さんは「琴勝峰に、高校の先輩で大関の顔を張る度胸があるか」と話し、向正面解説の舞の海さんは「(琴勝峰は)2、3発は食らうと思った方がいい」と言い、張り手三昧の流血対戦を予想していた。

しかし、貴景勝は左腕を差して迫力のすくい投げをうち、琴勝峰を土俵に転がした。突き押しや張り手だけでなく、美しすぎる投げ技ができるのは、さすが大関だ。