(イラスト:木村桂子)
内閣府が発表した令和4年版高齢社会白書では、65歳以上の人の79.6%が、親しくしている友人・仲間を持っていると回答しています。人生の後半は、気の合う友人と趣味やおしゃべりを楽しんで、自由気ままな時間を過ごしたい──。そんな願いを打ち砕いた、あの人の裏の顔。加藤麻美さん(仮名・佐賀県・無職・68歳)は、積極的に声をかけてくれる、近所に住む動物好きのAさんに親しみを持ちましたが……。

老後の友人の一人だから我慢せねば、と言い聞かせ

8年前、会社を定年退職。同時に、25年近く参加していた歴史サークルが閉会してしまったことで、私は大事な世間とのつながりを一度に失うことになった。

私は未婚で会社勤めが長かったこともあり、近所の人の顔は知っていても、挨拶する程度の交流のみ。老後の人付き合いはゼロに近く、段々と心細さを感じるようになっていった。

そんな折、積極的に声をかけてくれたのが近所に住む主婦のAさんだ。年齢も近く、犬や猫など動物好きらしいことが、親しみを感じた理由だった。事実、彼女は息子さんが学生の頃にもらってきた犬の面倒を最期まで見続けたし、その犬が亡くなった後も拾った猫を2匹飼うなどし、本当に優しい人だと思ったものである。

当時わが家の周りにはノラ猫が多くいて、動物好きの私は、ときどきエサを与えて楽しんでいた。ある日Aさんが、「これ以上仔猫が増えたらかわいそうだから、避妊させようと思うんだけど、カンパしてくれない?」とやって来た。私も同じ考えだったため、言われるがままの金額を渡すことに。