翌日病院へ引き取りに行くと、猫はきれいなタオルに横たわり、顔は美しいベールで覆われて、私たちがこれまで見たどの姿よりもかわいく、幸福そうな表情をしていた。

私と母は次第に怒りが込み上げてきて、Aさんに「わが家に連れてきたので見に来てください」と電話をかけた。彼女はきまり悪そうな顔でやって来て、遺体を見るなり、「かわいそうだね」とポツリ。

母が「先生が体を拭いてくださったからきれいでしょう」と言うと、お金を請求されると勘違いしたのか、慌てふためいて帰っていってしまった。

私は猫の死因を、近所に花の手入れをする人が多いため、消毒剤の入った水を誤って飲んだからではないかと考えていた。けれど、猫好きの友人から、「その猫は利口でしょう。水を飲んだりしないわよ。きっと慣れた人から腐った魚なんかをもらって油断したのよ」と言われ、ハッとした。

そういえば、Aさんの夫はよく釣りに出掛けている。食べきれずに余った魚を与えたのかもしれない。証拠はないが、ケチなAさんならありそうな話だなと思うと、ますます許せない気持ちになるのだった。

動物好きで優しい人だと思ったからこそ、老後の友人として、末永く親しく付き合っていきたかったのに! 似非動物好きにまんまと騙され、かわいい猫まで救えなかった……。

その後はなるべくAさんと会わないよう、避けるように過ごす日々。愛想がよく、いまだに動物愛護を吹聴し続けている彼女だが、いつか化けの皮が剥がれると信じている。

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