独りではなかったんだと言ってあげたい

介護される人って、時間が経つにつれ、できないことが増えていくんです。トイレがひとりではできなくなる、お風呂に入れなくなる、私のことを忘れていく……。どんどん失っていくのが介護なんですね。

赤ちゃんは逆に、できることが増えていくんです。寝返りが打てるようになって、ハイハイを覚えて。

でも、そんな赤ちゃんもいずれお年寄りになって、介護されるかもしれないですね。

生まれて、いろんなものを手に入れながら大人になる。だけど、いずれ少しずつ失っていって、ゼロになる。ちょっと寂しいですけど、その寂しさに寄り添うことが介護なんだと思います。

おじいちゃんも、お母さんも、おばあちゃんも、独りではなかったんだと言ってあげたいですね。

著者・岩佐まりさんとお母さん、二人揃って浴衣での一枚(写真提供:著者)

※本稿は、『認知症介護の話をしよう』(日東書院本社)の一部を再編集したものです。


認知症介護の話をしよう』(著:岩佐まり/日東書院本社)

若年性アルツハイマーの母を20歳から介護する著者が出会った、
認知症になった家族と生きる10人の物語

――不安や悩み、暮らしの工夫、向き合い方
家族の語りから見えてきたことがありました。

介護に正解はない――

明日からの介護生活に役立つ、介護者が知っておきたいことが満載。
年齢や性別、立場もさまざまな10人が、自身のことばで語るそれぞれの介護。

ひとりで抱え込まないで、
いろんなひとの話を聞いて、そして、周りのひとに自分の話をしてみてください。

介護について、家族について、
話をしているうちに勇気が湧いてきて、
また明日もがんばろうと思えたりするものです。

介護に正解はありません。

現実を知ることで前向きになれるヒントが、
ここに詰まっています。

「介護をする人は、介護をされる人のために、幸せにならなければいけない。それが私の持論です。本書には、そのためのヒントが詰まっています。」
(本文 「はじめに」より)