逃げ場所がないと、一緒に絶望しちゃう

ウンチを漏らして椅子や壁を汚されちゃったら、本当にげんなりします。でも、「まあいいや、壁紙は張り替えればいいし」って思えれば、どん底まで行くことはない。

そう思えるのは、自分の中に居場所を作っておいて、そこに逃げ込めたから。自分の中の逃げ場所から見ると、ウンチを漏らしているお母さんに少しだけ距離を置けるから、「まあいいか」って思えるんです。

そして、逃げ場の中には編み物とか、自分だけの楽しみがある。編み物にはずいぶん救われました。でも、逃げ場所がなくて介護されてる人との距離がゼロだったら、一緒に絶望しちゃいますよね。それだと、私はもたなかったと思う。

『認知症介護の話をしよう』(著:岩佐まり/日東書院本社)

ちょっと距離を置いて眺めると、介護を楽しむことだってできます。

この写真、まりちゃんにも送ったんですけど、面白くないですか? おばあちゃんが血まみれで倒れてる写真。

これ、血じゃないんです。ケチャップなんですよ。なんで倒れてるかというと、死んだふりなんです。

ある時期から、おばあちゃんはしょっちゅう死んだふりをするようになったんです。辛くて死にたかったんでしょうね。それで、死んだふりをしたら本当に死ねると思ったんじゃないかな。

でもね、そういうおばあちゃんを見ても、「そっか、死にたいのかー」って思うだけです。感情はそこでストップ。その先は考えない。