同世代の中ではマイノリティ

当然こんなものばかり読んでいると、太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼ぶようになり、アジアへの侵略を「欧米の植民地であった東亜を解放する戦争」とする史観に傾いていく。

とは言えこのような架空戦記モノや『戦争論』を読んでいたのは、我々同世代の中ではやはりマイノリティであった。私の世代(35~39歳)の男女総人口は、国勢調査に基づけば約730万人(2022年現在)である。

『戦争論』読者のすべてが我々の世代に吸収されたとは到底考えられない。そもそも『戦争論』は当時、保守系雑誌『SAPIO』(現在は不定期刊行)の連載「ゴーマニズム宣言」で展開されており、同誌の主力購買層は当時からして40・50代以上である。

仮に『戦争論』読者の50%が我々の世代だったと相当高めに仮定しても、その50万人は730万人に対して約7%にすぎない(実際のところは1%程度だろう)。

いずれにせよ極端に高めの推計でも93%近くは『戦争論』を読んでいないのである。やはりマイノリティだ。

私は『戦争論』に影響されたことは事実だが、その後大学に入って日本史を専攻すると『戦争論』の内容が屈折していると思い至るようになり、史学的な価値が低いと評価を改めた。

とは言え私のこうした来歴からして2010年、保守論壇に入った私が依然として政治的右派にカテゴライズされるのは間違いない。