ファイナル最終日の結果発表前、筆者のインタビューに答える反田さん(撮影:高坂さん)

W受賞の2人は幼なじみで…

そんな彼が、なぜわざわざコンクールを受けようと思ったのか。その理由についてこう話していた。

「一つは、目指すところがまだ上だったこと。子供の頃、日本人が2人入賞した2005年のコンクールのドキュメンタリーを見て、オーケストラと演奏する姿に憧れ、自分もあの舞台に立ちたいと思いました。もう一つの動機は、自分のオーケストラの存在です。仲間がコンクールを通して成長する姿を目の当たりにして、自分もそうありたいと思いました。そして、このオケを海外からもオファーのくる団体にするためには、前に立つ人間が一番注目されていなくては、と思ったところもあります」

次のコンクールに挑戦しようと決めた6年前から準備を始め、過去のデータを分析してレパートリーを決めるなど、戦略を練った。またコンクールが始まってからは、審査員席の近くに座って音響を確認、研究したという。彼が本来持つふくよかな音、思い切りよく歌う表現力に、努力の成果が相まって、見事入賞を勝ち取った。

日本人としてもう一人の入賞者となった小林愛実さんは、反田さんの1歳年下、前述の「子供のための音楽教室」でともに学んだ幼なじみ。コンクール中も互いに演奏を聴き、支えあっていた。

小林さんは14歳の若さでメジャーデビューしたが、17歳の時、表舞台での活動を休止してアメリカのカーティス音楽院に留学。そこからの3年間は、ピアノを弾く意味を探して悩みながら学ぶ日々だったという。