自分を客観視する大切さに気づいて
僕はもともと言葉より先に喜怒哀楽の感情が顔に出るタイプで、いつも親から「ふてくされた顔をしないの!」と注意されているような子どもでした。
そう言われるのが嫌でうまく隠しているつもりだったんですが、全然できていなかったらしくて(笑)。たぶん自分が人からどう見られているか、興味がなかったからだと思います。
でも最近は反対に、「若いのに客観性があるね」と言われることが増えました。役者として4年間、濃い時間を経験したこと、そして自分を俯瞰で見られなければこの仕事には太刀打ちできない、と気づいたのが大きいです。
きっかけは、『劇場版 奥様は、取り扱い注意』という映画への出演です。僕はこの作品で、地方で小さなバーを経営する青年を演じました。現場に入る前の役作りとして、頭の中で店を作り、実際に働いている場面を想像することから始めようと思ったんです。
たとえば、「両手にスーパーの袋を下げて帰ってきて、店の入り口が狭かったら荷物がぶつかるな」という具合に。
ところがいざ試してみたら、まったくできなかった。「扉の幅はどのくらい? 荷物の重さは? 腕の筋肉はどう動く?」と具体的に考えていったら、頭がパンクしちゃって。
その体験を通して初めて、ふだんから視野を広く持ち、自分を客観視しなければと痛感したんです。それからは役作りが楽になり、芝居の幅も広がりました。自分の知らない人間を作り上げるのは、難しいし苦しい。だからこそ楽しいです。