経済ジャーナリストの荻原博子さんが、お金に関するお得な情報をわかりやすく解説する新連載「トクする!荻原博子のマネーNEWS」。今回は「無税贈与が変わる」です(イラスト:さかがわ成美)
無税贈与の制度改正で
相続税対策でもっともポピュラーなのが、年間110万円までの無税贈与(暦年贈与)。この制度が、2023年度の与党税制改正大綱で変更され、相続の際に、これまでよりも多くの税金が課せられる可能性が出てきました。
子どもに財産を贈与すると「贈与税」がかかりますが、年間110万円までなら非課税ですみます。ただ今までは「持ち戻し」といって、親が亡くなる直近3年間にあげた無税分の贈与は、相続財産に組み込まれることになっていました。
たとえば、10年前から110万円ずつ子どもにあげている親がいたとしましょう。この場合、親が生きている間はすべての贈与が無税ですが、亡くなると、その前の3年間に遡って、あげたお金は相続財産に含まれます。
つまりこの場合だと、親が亡くなる前3年間にあげた330万円は相続する財産に加算されるので、贈与を受けていない相続人との公平を図れるということです。
この3年の「持ち戻し」が、7年に延長されることになりました。前述のケースで言えば、親が亡くなったらその前の7年間にあげた770万円が相続財産に組み込まれます。そのぶん相続税を多く支払わなくてはならなくなる可能性があるということです。
ただ、相続税には基礎控除があります。基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)なので、110万円の無税贈与7年分を加えても、相続する財産がこの範囲内なら、相続税はかかりません。ちなみに、1000万円以下の相続税の税率は10%なので、仮に770万円が課税対象になると、税金は77万円増えます。