応援し、応援される社会に

増田 実は私は東京オリンピックの閉幕を機に、オリンピックや世界大会といった大舞台のマラソン解説の仕事を離れることにしました。

松岡 明美さんの解説を楽しみにしているファンは、残念でしょうね。これからはどんなことをやっていきたいですか。

増田 パラスポーツの応援にもっと力を注ぎたい。競技者である前に人生の大変な山を越えてきていることもあって、選手は人として魅力的な人ばかり。パラリンピックで盛り上がった火が消えないよう、この先も応援団長を務めるつもりです。

松岡 僕も、20数年やってきたジュニアのテニス選手の強化を継続していきますが、テニスに限らず、人を応援して、人の心を前向きにするお手伝いをしていたい。僕は応援が生きがいですから。

選手と同じ思いでいるから、勝ったときも負けたときも、選手と共有した思いを観ている人に伝えられる。スポーツキャスターは僕の天職と思って、光の届きにくいスポーツに至るまで広く応援していきたいです。

増田 修造さん、ほんと天職だと思いますよ! 世界に目を向けると、貧困にあえぐ国では女性の支援が後回しになるから、女性の間にスポーツも普及しづらい。

私は「プラン・インターナショナル」という国際NGOを通じて途上国の少女たちの支援活動をしていて、アフリカのトーゴに女子サッカーチームを20ほどつくった活動を取材したことがあります。選手たちはあっという間に強くなり、男尊女卑の激しい国に、これまでなかった男性が女性を応援する空気まで生まれたんですよ。

松岡 テニス界でも、同じようなことがありましたね。「キング夫人」と親しまれたビリー・ジーン・キングさんが、男性より地位の低かった女子テニス選手の権利を守ろうと闘った結果、いまのテニス界があります。

増田 女性選手の活躍ぶりに、その国の成熟度が表れると感じますね。修造さんは人に対するリスペクトと愛がある人。これからも応援し、応援され、人とスポーツを繋ぐ仕事を、ともに楽しく続けていきましょう!