「あの言葉は心の弱い僕自身に向けて言っている言葉でもあるんですよ」(松岡さん)/「私も母も修造さんの言葉にどれほど助けられているか」(増田さん)

増田 よく考えたら、みんな自分のことで忙しいんじゃないかって。「世の中の人は、誰も私のことなんて気にしていない」と自分に言い聞かせたんです。

松岡 いまはSNSで誹謗中傷が広まりやすく、つらい立場に立たされる選手も多い。明美さんのその経験は、一歩を踏み出すための気づきになりますね。

増田 自分に言い聞かせるって、すごく大事ですよ。言葉の力は大きいから。

松岡 これも長友さんが話していたことですが、ワールドカップ二戦目のコスタリカ戦のあと、チームのみんなが「もう無理だ」という気持ちになっていたそうなんです。そこで長友さんが全員に、「できるよ」「信じて」と伝えていった。すると若手から少しずつ「勝てる」と言うようになったのだとか。言葉には人を変える力がある、と確信したエピソードでしたね。

増田 そのことで言うと実は私、修造さんに感謝していることがあって。昨秋、母が脳出血を起こして、いま要介護5の状態なんです。そしたら小学6年生の甥っ子がお習字で「あきらめんなよ」とか「後ろを見るな!前も見るな! 今を見ろ!」とか書いてくれて。

松岡 あ、それは……。

増田 YouTubeで修造さんが言っている言葉なんですってね。

松岡 人は誰でも過去を振り返って後悔したり、未来を考えて不安になったりします。あの言葉は心の弱い僕自身に向けて言っている言葉でもあるんですよ。

増田 この話をしながらちょっと涙が出そう。私も母も修造さんの言葉にどれほど助けられているか。だから、これからもポジティブな言葉を言い続けてください。