この気持ちはジェラシーか
翌週の金曜日も、私はその喫茶店に行った。なぜか、あの店を繁盛させたい気分になったのだ。またナポリタンを注文すると、本当に嬉しそうに「ハーイ」と返事をするマスター。思わず「美味しいね」と声をかけると、「ほんと、嬉しいわ」と礼を言われた。
この声を聞くと、不思議と心がほぐれる。この感じは、快感とでも言うのだろうか。また声が聞きたくて、クリームソーダを追加で頼むことに。注文して、マスターの喜ぶ顔を見て満足する、を繰り返す。
「いくらお金がかかってもいいわ」などと、つい気持ちが大きくなってしまう。夫の遺族年金だって雀の涙ほどしかもらえないのに。でも、あの快感を欲してしまうのだから仕方がない。私はいったいどうしたのだろうか。
またその翌週、ナポリタンを頰張っていると若い女性が入店してきた。マスターと仲よく話す姿に胸がざわつく。えっ……この気持ちって、もしかしてジェラシー? 以前、常連客とのやりとりを見たときと同じだ。
自分の感情に驚きつつも、マスターの魅力に気づいているのは私だけではないという事実に、複雑な気持ちになっているのだと理解した。まるで、アイドルを応援するファンの心理ではないか。喫茶店通いは、私の《推し活》ということか。