ドアを開けると、マスターらしき男性が手を振って、「あーら、いらっしゃい」と、にこやかに声をかけてきた。年の頃は50代。柔らかな声と、優しさが滲み出る言葉遣いやその姿に、私はふと安心感を覚えた。
古いトランペットなどレトロなものが飾ってある店の中にドタドタと入り、ナポリタンを注文。マスターは「ハーイ」と元気に返事をし、チャッチャと手際よく料理を作り運んできた。美味しい! 続けて、チーズケーキとコーヒーを注文。マスターは嬉しそうに、また「ハーイ」と返事をしてくれる。
そこへ急にドアが開き、年配の男性が入ってきた。慣れた様子でカウンター席に座り、「いつもの」と注文している。常連さんがいるのね……。親しげに話す2人の様子を見て、なぜか波打つ私の心。チーズケーキを平らげ、そそくさと家に帰ることにした。
帰り際マスターは、この店は金曜日だけ営業しているのだと言い、「また来てね」とずり落ちた私のリュックをさりげなく直しながら、笑顔で店の外まで見送ってくれた。家に着くと口をすすぎ、また敷きっぱなしの布団に潜り込む。久しぶりの外食は思いのほか楽しく、軽くなった心で眠りについた。