何か大切なものが失われてしまうように感じて

祖父は九十四歳。

『最後の旅』(著・写真:高重乃輔)

身体は元気だったけれど、物忘れが多くなっていた。祖母は八十八歳。怪我が続いて、介護施設と病院とを出たり入ったりしていた。

二人だけで島で生活していくのは、だんだん難しくなってきていた。でもだからといって、なぜ島を離れなければいけないのか。

二人は長い間、そこで暮らしてきたというのに。

私は、二人が鹿児島の離島から福岡郊外の街へと移り住む様子を写真に残したいと思った。二人が島を離れることで、何か大切なものが失われてしまうように感じたから。