●湯の峰温泉(和歌山県)の『湯登神事』

熊野詣の湯垢離場だった湯で、今も熊野本宮大社の例大祭は湯の峰温泉での『湯登(ゆのぼり)神事』(4月13日)から始まる。宮司以下の神職者・氏子・修験者・伶人(れいじん)(神楽人)・氏子総代、稚児(2、3歳の男の子)ら、総勢40~50人が列を成して熊野本宮大社を出発し、神歌を歌いながら、潔斎のために湯の峰温泉を目指す。稚児は湯の峰温泉で身を清め、湯粥を食べる。熊野の神は稚児の頭に宿るとされ、額には神様が降臨した証として、朱色の「大」の文字が記される。神事の間以外は稚児を地面に降ろしてはならず、ウマ役の父親が肩車をして移動する。

湯の峰温泉 つぼ湯

●草津温泉(群馬県)の『氷奉納の儀』

白根山の溶岩流の谷にある氷室の洞穴にある万年氷を取り出し、その氷に石楠花(しゃくなげ)の花を添え、神前に供える『氷奉納の儀』という神事がある。その氷は、無病息災を祈念して湯治客に振る舞われる『氷室のふるまい』という風習となり、受け継がれている。

『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える-心と体に効く温泉』(著:佐々木政一/中央公論新社)

●四万温泉(群馬県)の『湯立神事』、『湯立祭り』

大寒の日に、温泉を焚き、笹に湯をつけて周囲に振りかけ、神仏の心をいさめ、無病息災を願う『湯立(ゆだて)神事』と、 四万(しま)温泉の源泉で蒸したもち米をつき、その場で振る舞う「湯餅つき」などで賑わう『湯立祭り』が行われる。

四万温泉