意気揚々と始めたひとり暮らしも、いつしか40年以上――。好きな物に囲まれながらも、年齢を重ねて心の変化があって
親もとを飛び出して、本格的に「ひとり暮らし」をスタートしたのは20代ギリギリ、30歳の誕生日を迎える直前だったと思う。
大学時代、そしてOL時代(出版社に勤務)、下宿してひとり暮らしをしている友人や同僚が羨ましくてたまらなかった。たとえ風呂無しの小さな部屋であっても、そこは誰にも干渉されない「自由の天地」のように思えた。
母はともかく、心配性で神経質な父から逃れたかった。子どもの頃は「父親っ子」のように言われ、自分でもそう思っていたフシがあったのだけれど、オトナになったら、俄然、うっとうしく感じられてしまったのだ。
今にして思えば……20代最後の、あの時点で強引にひとり暮らしに踏み切って、よかった。いきなりの貧乏暮らしも面白おかしく味わうことができたから。親のありがたみにも気づかされたから。
ひとり暮らしの中で、「私という人間、なんて世間知らずなんだろう!?」と気づかされること、たびたび。自分が思っている以上に「生活の知恵」とか「世知」というか……そういうことに疎いのだった(いまだに、商店などでくれるサービス券や何とかポイントの類いは、サッサと捨てたり、妹にあげたりしてしまう。いちいち取っておくのが面倒くさくて)。