そんな〈生活オンチ〉でノーテンキな人間なので、森茉莉さんの一連のエッセーを読んだ時は、「スゴイ! 私より、こんなに浮世ばなれした〈生活オンチ〉の人がいる!」と嬉しかった。救われた。
あれは1981年のことだったから、もう40年以上前になる(と書いて、自分でもビックリ)。ある雑誌の仕事で森茉莉さんのお宅(小さめのマンションの一室)でインタビュー取材することができた。
最初はダイニング・キッチンのような部屋で話をうかがっていたのだけれど、「寒いから、こちらで」と言われ、寝室へ。
はい、森茉莉さんがエッセーで書いておられた通りの、乱雑ではあるけれど愉しい部屋だった。足の踏み場もなく本が積まれていた。
ベッドにもぐり込んだ茉莉さんが「そこに座って」と言ったのは、ベッド脇の本の山。窓辺には長嶋茂雄の日灼けしたポスターがブラさがっていた。私は茉莉さんの指示で、本の山をイス代わりに座ってインタビュー……。