渡邊 素晴らしい。歯の健康を保っていることも、天童さんの声を支える土台になっているはずですよ。もう1つ重要なのは、滑舌につながる舌や口まわりの筋肉です。筋肉は使わなければ衰えてしまう。

コロナ禍以降、東京ボイスセンターでも声の相談が増えていますが、その原因の1つが「人と話すことが減った」ことだと考えています。高齢の方はマスクをしていると互いの声が聞き取れず、会話を諦めてしまうケースも多いようです。

天童 母にも、「電話でもいいからお友だちとしゃべろうね」と、よく言っています。

渡邊 ちなみに先ほどお伝えしたのどまわりの筋肉は、発声だけでなく、食べ物を飲み込む「嚥下」という大切な役割も担っています。この機能が衰えると、食べ物が気道のほうへ誤って入り込み、誤嚥性肺炎を起こし、寝たきりになりかねません。

女性は男性に比べておしゃべりと言われますが、声を出すことは健康寿命にも大きな影響を与えているのです。

天童 私たち歌い手だけでなく、俳優さんや政治家の方など、仕事で声を使う人は元気で長生きの印象があります。特にお年を召したお坊さんが読むお経は、しっかり響いてメリハリがあるから眠くなりにくい。(笑)

渡邊 実際、政治家やお坊さんはほかの職業よりも長寿だという統計もあるんですよ。