60年近いおつきあいだった橋田壽賀子さん(右)と石井さん。若かりし頃の打ち合わせ風景

橋田さんがいなくなって……

長く続いている友人に共通しているのは、しゃべっていて楽、ということでしょうか。それが大事かなと思っています。なかには、しょっちゅう言い合いをする相手もいますよ。喧嘩しても仲が続くというのは、相性の問題もありますが、お互い、引きずらない性格ということもあるのでしょう。その代表格が、橋田壽賀子さんです。

喧嘩といっても、主に作品に関することです。よりよい作品にするために、時には衝突する。お互い遠慮せず、ストレートに言い合える仲だったからこそ、かえって長く一緒に仕事ができたのかもしれません。

人間関係に関しては、「べたべたしない」「私生活に踏み込まない」のが長続きのコツと思い、実践してきましたが、橋田さんは例外です。私生活も含めて、深くかかわってきました。

『婦人公論』で橋田さんの追悼の際にもお話ししましたが、書くのがすごく早い人なのに、ある時、片思いで脚本が書けなくなってしまった。橋田さんが好きになったお相手は、私の同僚の岩崎(嘉一)さんという人でした。

それで私が岩崎さんに「よかったら電話かけてみて」と、橋田さんの電話番号を渡したんです。10日後、お二人がつきあっていると聞いて、その早さにびっくり。私が立会人になり、結婚届を書いて出しました。

橋田さんは岩崎さんにベタ惚れでしたが、夫婦喧嘩もけっこう激しかった。というより、一方的に橋田さんが怒る、という感じでしょうか。

私と橋田さんは、一時期、同じマンションで暮らしていました。今とは別のところです。ある日、夜中の3時頃にいきなり玄関のチャイムが鳴り、「今すぐ、うちに来て!」。何事かと思って橋田さんの家に行ったら、ご主人が、「見てください」と。なんと岩崎さんの背広が、みんな切られているんです。私、呆れて言いましたよ。「なんで、そんなもったいないことするの? 会社に行けなくなるじゃない」と。そんなこともありました。