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かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。

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最後から2番目の家

予算と物件の条件を確認したところで、賃貸か購入かで迷っていた「アラ還からの老後の住まいチャレンジ」の続きに戻りましょう。連載9回目に書いた通り、ファイナンシャル・プランナーさんからは、購入するのであれば、「安かろう・古かろう」ではなく、「優良な、売れる中古物件」を買ったほうがいいと助言されました。投資用不動産の一つを売却したお金を頭金に入れて、対象物件の予算を上げたほうがいい、そのほうが20~30年後に老人ホームに移る時にも売却できる(買い手がつく)からホームの入居一時金にできる、という計算でした。

でも、頭金を増やしてまで予算を上げるとなると……いろいろ考えてしまいます。その家は、「最後から二番目の家」、まさしく終の棲家です。このあと20~30年どころか、(幸いにしてずっと元気で老人ホームに移る必要がなかった場合には)もしかしたら半世紀も、住み続けるかもしれません。そう考えると、はて、都内を離れていいのか? 隣県とはいえ、実家の近くまで引っ込んで良いのだろうか、それで私は満足できるのか?と迷い始めました。

もともと、実家近くでマンション探しを始めた時から、都内への未練は残っていました。お芝居やコンサートに行くにも便利ですしね。いずれ、将来は再び都内に住むつもりでした。母のことがなければ、迷わず都内で「終の棲家」を購入したでしょう。でも、そこまでこだわるのなら、家は都内で買うべきじゃないか? そもそも、実家の近くと考えたのは、予算的に都内は無理だと諦めていたせいでもありました。でも、自己資金を増やして予算を4500万円まで上げれば、都内でも手が届きそうです。

ということで、心機一転、仕切り直し。まさに右往左往していますが、今度は都内でマンションを探そうと、都内の不動産仲介業者に連絡を取り始めました。いま市場に出ているマンションで、予算を上げたら、どの場所にどのくらいの広さ・グレード・築年数の物件があるか、実際に内見してみようと思ったのです。そして、3月のある土曜日、大手不動産仲介業者の案内で、23区内にある物件2つを内見しました。