共同担保
こちらの担当者は男性K氏でした。K氏は、なるべく早く結論を下さい、と言います。同じマンション内でフルリフォーム物件が1000万円ほど高く、売りに出ていました。そこと比較してもお買い得なので、早めに決めた方が良い、1週間以内に結論が欲しい、とのこと。ローンについては、旧耐震の物件でも融資が通る銀行のアテがいくつかある、照会できる、とも言います。
でも、私の属性の問題もあります。フリーランスなので住宅ローンがつくのか心配だと話したら、K氏はこともなげに言いました。「大丈夫ですよ」。確定申告の金額のほか、不動産を売って頭金にする計画を話しました。すると、不動産を売らない場合、頭金としていくら用意できるかを聞かれました。株や投資信託を売れば500万円くらいは、と話したところ、K氏は「それならば、不動産が売れなくても、ローンは通るんじゃないかと思います」と言います。ええ? S氏と同じように、確定申告の金額でフルローンが引けるというのでしょうか。どういうことでしょう。
詳しく聞いてみると、K氏いわく、「投資用物件を持っているのなら、それを共同担保に入れてしまえば良いんです。それなら今すぐでもローンが借りられますよ」。そして、不動産が売れたら、繰り上げ返済をすれば良い、と言います。
いやいやいや、違うでしょう! これは黄色信号です。明らかにK氏は売り急いでいます。年度末だし、早く売りたい、私が不動産を売って頭金が用意できるまでなんて待っていられない、ということでしょう。そこで、今でも買える方法を提示しているだけです。これは危険です。
「共同担保」と聞いてピンと来る方は、不動産通ですね。現に所有していて、抵当権のついていない、担保価値のある不動産を、別の不動産を買う時に担保として差し出すことです。それは住宅ローンじゃありません。「不動産担保ローン」といって、住宅ローンとは金利が全然違います。投資用不動産の扱いだからです。住宅ローンなら、サラリーマンなら優遇金利で0.525%とか0.475%とか0.375%とか、フリーランスの私でも0.9%とか、1%未満の金利で借りられるようですが、不動産担保ローンとなると金利は4~7%などとなってしまいます。銀行との取引状況によっては、もう少し金利は下がるでしょうが、はっきり言って、そんな高い金利なら、借りてまで自宅を買う意味はありません。ずっと賃貸でいいです。
私はK氏に「住宅ローンが使えますか」と聞いたのです。なぜなら、「住宅ローン」に意味があるからです。住宅ローンほど金利が低く、つまりレバレッジが効かせられる金融商品はないのです。自宅用にマンションを購入しても良いと思えるのは、いま低金利で住宅ローンを借りられるからです。投資用物件を買い足すのなら高金利の投資用ローンを使いますが、でも投資用物件としてなら、この3280万円の物件は選びません。自宅用と思えばこそ、眺望を優先して、古くても駅からバス便でも良いかと思えます。でも賃貸物件としては魅力的ではありません。利回りは低くしか見込めないでしょう。