◆音楽が音楽であり続けるための試みをし続けて
振り返れば、それが「ミュージシャンがいなくなる」という発言の意味するところだったんだよね。あの頃はそこまで気がついていなかったけど、不思議にそんな感覚を持っていました。聴き放題できるストリーミングに支配されてしまうことへの危機感があったのかもしれません。
たとえばイギリスでは、ある曲に500万アクセスあったとしても、そのアクセス数でミュージシャンに還元された金額が15万円程度だったとか。日本はまだマシだと聞いてるけど、これでは音楽を作ることはできない。ストリーミングは、ラジオやテレビでその曲を知ってもらうための方法として使うのがいいと思ってるかな。これは僕の考えだけどね。
僕が設立した配信サイト「Weare」は最良質の音源にこだわり、価格は安価にしつつ、所属事務所などの垣根をなくしてミュージシャンへの還元率を高く設定してる。ビジネスのために作ったものじゃないからね。
ストリーミングを否定するつもりはないんです。時代が生んだ文化だから。むしろ「聴き放題」を利用すればいい。そのうえでミュージシャンのプライドを持って、「聴き放題」では出せないゴージャスな音を配信することが大切だと思うんだよね。そのゴージャスな音質はハイレゾという。「Weare」ではこれにこだわってる。あとは聴き手が選べばいい。
多くの人が、当たり前のようにCDを買ってくれた時代に生きていた僕だから、やらなくちゃいけない役割がある。いまは本当に新しいミュージシャンが出にくい時代でね。ミュージシャンがミュージシャンとして生きていけるようにする役割が、僕たちの世代にはある。音楽が音楽であり続けるための試みはしなきゃ。